Ending -Blue-
地獄の色彩が失われた。
ブルーが地獄の君主を倒したのだ。
強大な力をもつ君主を相手に一人で戦ったのだから、当然ブルーの方も満身創痍だ。
「う、、」
やっとの思いで立ち上がり、辺りを見回す。目の前にあるのは七支刀。持ち主はいない。
「勝った、、、ん、、だ、な」
僅かに残った魔力で傷を癒しつつ歩く、、、、が、出口はない。
封印が復活したことにより戻る道が閉ざされたのか。
戻れない、か。あの子達は無事だろうか。
俺はこの空間で朽ち果てるのか？
別に、、、どうでもいいか。
帰りを待つ存在になり得る半身は、もういない。
自分の手で殺してしまったのだから。
「、、、、、」
ブルーはいつの間にか巨大な刀のある場所に戻って来ていた。
どうせ出られないのなら、と
君主の残した七支刀の裏、君主の居た部屋の奥へと進む。
場の力が弱まっても、まだそこには色彩があった。
荘厳、優美。物語の天国と見紛う空間。
美しいのは見た目だけの、邪気に満ちたリージョンが地獄だ。
それでも少しは落ち着く。
ここで暫く眠るつもりで、それに都合の良いところを探す。
「、、？、、」
何かがきらりと光るのに気付き、近づいてみると
蓮の花に似た植物に絡まる黄金の装飾品があった。
修士の証。
傷んではいるが、ブルーが首に掛けているそれと同じ。
マジックキングダム最強の術士に与えられるもの。
辺りを見渡すと、同じものが歴代術士の人数分ある。
嫌な考えが浮かんでくる。
「まさか、、、」
ブルーは消滅していく君主の表情を思い出した。
苦痛に歪んだ顔。
けれど、、
俺を嘲るような、憐れむような視線。
最期に奴は何を見た？
「、、、俺が倒したのは、、、」
おそらくは。
最初にマジックキングダムが倒した君主は、指輪の力で生まれた魔物だったのだろう。
しかし最強の術士は戦いの後、残った術士達によって地獄とともに封印されたのだ。
＜自分を犠牲にして多くの命を護るのよ＞
言葉通り、心を二つに分けられて。
忠誠を誓い、半身を殺し、
最強となった術士は君主を倒す。
そして次の君主は彼。
繰り返しの歴史。
呆然としていると、生き残った魔物達が集まってきた。
ブルーを前に、跪く。
主を求めているのか？
こうやって幾人もの術士達は。期待をもたれた双子達は。
＜この子達を護ってくれ＞
護る？何を？
あの子達の未来を？
護るべき未来とは？
赤子達の辿る道は俺達と、、、。
右手に握りしめた証をつたい血が流れ落ちた。
「、、ならば俺がこの地獄に君臨してやろう、、、いや、ひいては全てのリージョンに」
天使を模した有翼系の魔物が、青年の周囲を飛び回る。
新しい君主の誕生を祝福するかのように。
・
・
地獄の力は再び満ちる。
一人の術士舞い降りた。
術士の衣。修士の証。
かつてのブルーと同じ表情で。
「頃合いだな」
「七支刀の餌食となるか。それとも、、」
地獄の君主は七支刀を携え声高に云う。
「来るがいい。宿命に抗えない哀れな双子よ」
NEVER END